日本で初めてクルド人の男性が難民認定されました。
出入国管理庁が、トルコ国籍のクルド人男性を難民認定しました、7月28日付で認定、9日に交付されたようです。
トルコ国籍のクルド人の方が難民認定されるのは、日本で初めてのことです。
日本に住む2,000人と言われている在日クルド人の方にとっては嬉しいニュースには間違いありません。
しかし、認定申請をして認定されたというものではありません。この男性は、8年もの歳月をかけて難民という認定を取ったのです。
しかも、司法の力で取れたのです。
上記のクルド人(男性・30歳)は、2014年2月に日本に来ました。
彼は、トルコで軍・警察の迫害を受けており、日本に来た2014年4月と2018年に難民認定の申請をしましたが、出入国管理局(当時)に退けられました。
2019年に、彼は難民認定の不認定処分の取消しを求めて札幌地裁に提訴しました。
一審の札幌地裁の判決は請求を棄却しましたが、高裁は、男性がトルコでクルド人独立を目指す組織のメンバーに食料を提供したことで軍などから拷問を受けており『迫害の恐怖を抱く客観的事情がある』と認めて難民にあたると判断しました。
この判決に対しては、国が上告をせず確定しました。
この判決によって彼(クルド人男性)は、出入国管理庁から難民認定され、8月9日に認定の交付を受けることになりました。
この認定には、司法と行政の関係が影響しているように思います。
実は、これ以前の2006年6月、名古屋高裁が別のクルド人男性の難民不認定処分を取り消すよう命じたことがありましたが、当時の法相は難民認定しないなど司法を軽視する傾向がありました。
その後、2018年12月の東京高裁判決で、「難民認定の不認定処分取り消しの判決が確定した場合、法相は難民認定すべきだ」という判断がなされました。
これを受けて入国管理局(当時)は、2019年1月、出身国の状況が改善されないなどの理由がない限り、判決に基づいて速やかに難民認定するようにと全国の入管に通知しています。実際にこの通知に従って、旧ソ連出身の無国籍男性とイラン国籍の男性2人が難民認定せれました。
このような背景があって、今回クルド人の方が難民認定がされた様に思います。
気がかりなこともあります、現行法では、難民申請中は送還されないとされていますが、同じ理由で難民申請している場合、3回目以降なら相当の理由がない限り送還できるというように入管難民法の改正案を政府が検討していることです。
この件があるから、今回だけ難民認定したということも考えられないわけではありません。
どちらにせよ、今回のクルド人の方の難民認定は一筋の光ではあります。
しかし、日本における難民認定は非常にハードルが高いものです。
当事務所は、ハードルが高いという認識を持って在留外国人に関わる仕事に精一杯取り組んでまいります。
最後に、日本における難民の定義についてです。
これは、難民条約(1951年の難民の地位に関する条約)の第1条A(2)で定義されていることだと思います。
「人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会的集団に属するなどの理由で自国にいると迫害を受けるか、あるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々」
これらの人々のことを難民と定義しています。
ここで改めて認識していただきたいことがあります、難民条約では、戦争・紛争で国外に逃れた人々を難民と定義していないことです。
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